寺院の火災保険で再建に必要な補償を備える3つのポイント

2019年10月に沖縄県で首里城が火災になり大きな衝撃が走りました。首里城では最大70億円の補償がされる火災保険に年間保険料2,940万円で加入していると報道されました。首里城再建には100億円以上の資金が必要とも言れてますが、保険金で70億円あれば再建の原資として充分に活用できる事と思います。身近な文化財である寺院は、火災保険に適切に加入するために注意が必要な物件のひとつです。宗教法人や住職の方が、火災保険契約時に注意すべきポイントをお伝えします。

火事と火災保険

火事は一瞬にして建物を焼失してしまう恐ろしいものです。自分だけでなく周囲にも被害を及ぼし日常を一変させてしまうため、普段から火事にならないよう細心の注意を払っておくことが求められます。一度火事が起きてしまうと、燃えてしまった建物は元に戻りません。それが重要な文化財であったら、その損害や損失はとても大きなものとなります。しかし、十分なお金があれば、同様の建物を再建することができます。その手助けをするのが火災保険です。

火災保険は、契約の仕方によって万が一事故が起きた際に受け取れる保険金が大きく変わる可能性があります。再建に必要な金額を受け取れるような設定・条件で契約していれば、同等の建物を再建する費用の大半を賄うことができます。しかし、そうでない設定・条件で契約していた場合は、思うような保険金が受け取れない場合があります。

都市伝説の様に「柱一本残っていたら保険金が全額出ない」「対象にならない部分が多く、ほとんど保険金を受取れなかった」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、思うような保険金が受取れなかったケースは、契約の仕方に原因があるケースが多いです。特に寺院など文化財としての価値がある建物は、再建費用が一般的な住宅とは異なるため注意が必要です。

再建費用を賄うために抑えておきたい3つのポイント

火災保険には補償内容や特約など検討する項目がたくさんある複雑な商品です。その中で、火災保険で再建に必要なお金を受取るためには下記3つが重要なポイントになってきます。

1:どの建物が補償対象かを確認する
2:それぞれ建直すのにいくら必要かを確認する
3:いくらの補償が必要かを決める

1:どの建物が補償対象かを確認する

火災保険は、基本的に保険を掛ける建物を特定して契約します。寺院は本堂の他、庫裡、不動堂、門、その他付属建物が1つの地域に多数存在しています。それらの物件をもれなく保険の対象にする必要があります。これを怠ると、火事が起きたときに「本堂だけしか補償されていなかった」等の事態になるため、物件を漏れなく対象にしてあるかが重要です。

2:それぞれの物件を建直すのにいくら必要か確認する

火災保険は、建物など特定の「モノ」に保険を掛けるので「そのモノがいくらなのか」を予め明確にしておく必要があります。この「いくらなのか」を決める基準として下記の2つがあります。

時価 → 経年劣化等を考慮したその時点の価値
新価 → 1から同じ物を作る・購入する為に必要な金額(再調達価格とも言います)

火災保険は物の価値以上には補償を設定できない為、契約時に上記のどちらで建物の価値を決めるかによって設定できる補償の上限が違ってくることになります。

3:いくらの補償が必要かを決める

保険を掛ける建物に「いくらの補償が必要か」を決めます。事故が起きたときに受け取れる保険金が違ってくるので非常に重要なポイントです。新価基準の方が時価よりも価値は高くなるので、保険料も高くなりがちです。しかし、事故があった場合は新価基準では同じモノを作るだけの資金を受取れる可能性が高いので、再建がしやすくなります。

保険会社の建物評価サービス

建物がいくらのなのか正しく設定することが重要とは言っても、歴史的な建造物である寺院の価値は素人ではなかなか分からないものです。十分な金額をお支払いできない事を減らすため、建物の鑑定を専門家に依頼するサービスを実施している保険会社もあります。

鑑定料については、その後の保険契約の有無、物件規模等によって費用が発生する事もあります。今の保険契約が保険金額をプロフェショナルに鑑定せずに契約していた場合、もしも罹災があった時思うように保険金が受取れない可能性があるので、改めて確認してみるのをおすすめします。また、増改築等を行った場合は価値が変わっている可能性が高いので注意が必要です。

正しい保険金額で罹災した時にいち早く再建するために、建物の鑑定や火災保険の加入方法について気になる方はお問い合わせください。