
2021年度の税制改正が施行されて既に数ヶ月が経ちますが、ここで改めてその内容を確認したいと思います。
今回の税制改正は、新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響、世界的に広がる脱炭素社会実現への取り組みなど、社会を取り巻く環境が激変する中、そういった社会環境の変化に対応する改正内容になっています。
改正の柱、テーマは4つです。
「1.新型コロナウイルス感染拡大に伴う税負担の軽減」
「2.コロナ禍の家計支援・資産形成」
「3.デジタル化・脱炭素社会の推進」
「4.企業再編・国際競争力強化」
ここでは、家計分野への影響のある、上記 1.2.の内、主な改正内容についての概要を解説したいと思います。
1.新型コロナウイルス感染拡大に伴う負担軽減
①住宅ローン減税の特例措置
住宅ローン減税は、住宅ローンの内4000万円(認定住宅の新築などの場合5000万円)を上限に年末の住宅ローン残高の1%を所得税から控除する仕組みです。
2019年10月の消費税増税に伴い、消費税率10%で家屋を取得する場合は控除期間が10年間から13年間へと延長されました。今回の改正では2020年12月末までとされていた入居期間が2022年12月までに延長されました。ただし、契約期限は、注文住宅の場合2021年9月末まで、分譲住宅等の場合は2021年11月末までとなっています。
また、対象となる家屋の床面積要件が「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されました。
②エコカー減税の見直し
エコカー減税とは、環境性能の高い車に対して、車検時にかかる自動車重量税を軽減するものです。これまで2021年4月までとされていた適用期間が2年延長され、2023年4月末までになりました。
ただし、これに伴い減税の対象となる車両の燃費基準が現行基準より厳しい『2030年度燃費基準』が採用されることになりました。
具体的には、
<電気自動車・プラグインハイブリッド車などの次世代自動車>
・初回および2回目車検時の2回免税(燃費基準の達成要件無し)
<ガソリン車・ハイブリッド車>
・新燃費基準の120%達成で2回免税
・同基準90%達成で初回免税
・同基準75%達成で初回50%減税
・同基準60%達成で初回25%減税
<クリーンディーゼイル車>(2年間の経過措置で免・減税対象から外れる。)
・同基準の120%達成で2回免税
・現行の燃費基準達成で初回免税
また、自動車取得時の消費税の環境性能割1%軽減は2021年12月末まで、電気自動車・プラグインハイブリッド車等を対象とした自動車税の減税特例措置は2023年3月末までにそれぞれ延長されました。
③固定資産税軽減措置
商業地、住宅地、農地等について、2021年度に限り税額が増加する場合、前年度の税額に据え置く特別措置が適用されます。
2.コロナ禍の家計支援・資産形成支援
①子育てに係る助成の非課税措置
これまで、ベビーシッターや認可外保育所を利用し、国や自治体による助成措置を受けると「雑所得」として課税対象となっていましたが、今回の措置ではこの助成金等については非課税扱いとなりました。
非課税の対象となるのは、認可外保育所、ベビーシッター他、一時預かりや病児保育などの子を預ける施設の利用料、これら子育てに関連する助成と一体として行われる生活援助や家事支援、保育施設等の副食費、交通費の助成などです。
②セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の延長
セルフメディケーション税制は、健康診断や予防接種など健康の維持増進および疾病予防に取り組む個人の税制負担に対する配慮として創設されました。
特定一般医薬品などを購入し、その購入代金合計が1世帯あたり年間1万2000円を超えた場合、その分を課税対象から所得控除する制度で、従前の医療費控除との選択制となっています。
今回の改正では、2021年12月末までの適用期限が5年間延長され、対象医薬品の要件も見直しされました。また、申告の際に健康の保持増進や疾病予防への取組関係書類の添付や提示が必要でしたが、医療品購入費明細書にその取組に関する事項を記載することで関係書類の添付や提示が不要になりました。
③住宅取得等資金贈与の非課税措置拡充
住宅取得等資金贈与の非課税の特例は、父母や祖父母からの資金提供を受け、住宅の新築・増改築した場合、贈与税が一定額まで非課税になる制度です。
今回の改正では、2021年4月以降1200万円に縮小予定だった非課税枠が現状の1500万円のまま2021年12月31日まで延長されることになりました。
④教育資金等の一括贈与に係る贈与税非課税措置の延長と見直し
教育資金の一括贈与を非課税とする特例措置は、30歳未満で前年の合計所得金額1000万円以下の子や孫に対し、1人あたり1500万円までの贈与について非課税にするもので、2021年3月31日で終了予定だったものが今回の改正で2年間延長され2023年3月末までとなりました。
また、結婚・子育て資金を1000万円まで一括して贈与した場合、贈与税が非課税となる特例措置も同様に2年間延長されました。
⑤退職所得課税の適正化
退職所得課税では、退職金の税額計算の際、勤務年数等による控除に加え、退職所得に「2分の1」を乗じて税額の計算をしますが、今回の改正では勤続年数が5年以下の法人役員・従業員に対する退職手当金等について、「2分の1」を乗じないこととされました。
まとめ
以上、2021年度の税制改正内容を家計分野についてポイントを絞って解説しましたが、今回の改正では、確定申告や納税手続きの見直しなど、デジタル化の推進も盛り込まれています。
今後も国や自治体によるデジタル化・脱炭素社会の推進への取り組みが加速していくと思われますので、税制に限らず国や自治体の制度改正には注視していきたいものです。