
「前年同条件で更新してもいいですか?」
火災保険や自動車保険の更新時期に代理店からこんな電話がかかってきたことはありませんか? そんなとき、「はい」とあまり深く考えずに答えてしまったことはありませんでしょうか?
「いままで事故したことないし、見直しとかなんか面倒くさい…」という気持ちでついつい補償内容の見直しをせずに更新の手続きをしてしまう。それは非常に危険なことです。
安易に前年と同じで継続してしまうことが、いかに危険かを2つの事例とともにお伝えします。
保険料を支払っているのに保険金を受け取れない?
■事例1 火災保険
令和3年7月1日の熱海土砂災害により、A社が保有する建物が罹災。
建物の保険金額は9億円でした。
しかし、水災補償に加入していなかったためA社は保険金を受け取れませんでした。
残念ながらどんなに高い保険料を払っていたとしても、水災補償に加入していなければ土砂災害による罹災で受け取れる保険金は0円です。熱海市が発表しているハザードマップによると、A社が保有する建物は危険地区の中にありました。
このハザードマップを確認し、補償内容の見直しをしていれば、A社は水災補償に加入し、9億円の保険金を受け取ることで、建物をもとの状態に復旧することができたかもしれません。
現代の私たちはハザードマップなどを活用し、災害被害の危険性を認知できる状況にあります。これらの情報を利用して、いつ起こるかわからない災害に備えましょう。
お父さんが意識不明に!家族はどうなる?
■事例2 自動車保険
人身傷害補償の保険金額3000万円で契約をしていたBさんが単独事故を起こし、意識不明の重体になってしまいました。
「幼い子供が2人いるのに、主人が意識不明…。たった3000万円の保険金で何が出来るの!」奥様は声を荒げました。
実際、Bさんの自動車保険の人身傷害補償の保険金額3,000万円は、家族3人を養う父親に対する補償としては不十分でした。しかし、どんなに嘆いても、Bさんの契約では保険金額が3,000万円なので、最大でも3,000万円しか保険金を受け取ることができません。
契約時に人身傷害の保険金額を無制限にしていたら、Bさんは1億円以上の保険金を受け取れていた可能性があります。
人身傷害の保険金額は、運転者の家族構成等によって変える必要があります。Bさんの場合、結婚して子供が生まれる前の契約のまま「前年同条件」で更新をしていたため、このような悲劇が生まれてしまったのです。
保険は「加入しているかどうか」ではなく「補償内容」が重要!
代理店からの「前年同条件で更新してもいいですか?」という電話にそのまま「はい」と返答してしまうことがいかに危険なことか、わかっていただけたでしょうか。
保険はいざというときに備えるものです。いざというときに保険金を受け取ることができなければ、日ごろ支払っている保険料は意味をもちません。あなたの保険も見直してみてはいかかでしょうか。
「Mr.前年同条件の罠」にはくれぐれもご注意を…。