
近年、廃業を回避するためや事業再構築などの手段として、M&Aが注目を集めています。
M&A取引では、買収契約書において「表明保証」に関する条項が設けられていることが一般的です。表明保証は、売り手側が買い手側に対して、提示した内容に間違いないことを保証することです。
しかし、表明保証条項について、当事者間で条件が折り合わず、最悪の場合はM&A取引が成立しないこと(ディールブレイク)があります。
こうした問題に対して、交渉を円滑に進めるために利用される保険が「表明保証保険」です。今回はM&A取引と表明保証保険についてお伝えします。
1.M&A件数の増加
日本企業の後継者不在率は高い傾向にあり、2025年までに社長年齢が70歳を超える中小企業の約半数が後継者不在による廃業リスクにさらされています。また、新型コロナウィルス感染症の影響を背景に廃業を選択する企業も増えています。
こうした中、雇用の継続や廃業の回避、そして事業再構築を含めて生産性の向上を図るための手段として企業の合併・買収(以下「M&A」)が注目を集めています。
中小企業庁においても2021年に中小M&A促進のための「中小M&A推進計画」を策定するなど、これまで以上に中小企業の円滑なM&A取引を後押しする環境が整いつつあります。
このような環境下で日本企業のM&Aは増加傾向にあり、2021年には過去最多のM&A取引が行われました。また、中小企業を中心とした事業承継関連のM&Aも急増しており、引き続きM&A件数は増加するものと考えられます。
2.「表明保証」とは
株式譲渡、事業譲渡などのM&A取引では、売主と買主の間で買収契約書が交わされますが、その買収契約書において「表明保証」に関する条項が設けられていることが一般的です。
表明保証とは、売主が買主に対して、売主自身や買収対象会社についての財務や法務などに関する開示事項に虚偽がないこと(開示事項が真実かつ正確であること)を保証することをいいます。
売主が表明保証に違反した場合は、買主が表明保証違反によって被る損害について売主に対して補償の請求を行うことができます。具体的には、買収対象会社が買収交渉において開示されていなかった支払債務を負っていたことが判明した場合などが表明保証の違反に該当します。
売主の表明保証
一例 | 財務内容が貸借対照表のとおりで簿外債務が存在しないこと 第三者の知的財産権の非侵害や第三者からの被侵害の不存在 租税の未払いの不存在や申告書の適切な提出 未払賃金や労使間紛争の不存在 など… |
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表明保証違反の例
財務諸表関連 | 売掛金や買掛金の記載金額誤り 棚卸資産の評価誤り 現預金や利益水準の水増し |
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法令順守 コンプラアンス関連 | 固定残業代の合意かし 管理従業員の管理監督者該当性の不備 |
3.M&A取引で活用される表明保証保険
M&Aの交渉時には、表明保証条項の範囲、違反時の補償金額・期間などについて当事者間で条件が折り合わず交渉が長期化することや、最悪の場合はM&A取引が成立しないこと(ディールブレイク)があります。
このディールブレイクを回避し、表明保証条項などに関する交渉を円滑に進めるために利用される保険が「表明保証保険」です。M&A取引に関する保険なので「M&A保険」と呼ばれる場合もあります。
表明保証保険はこれまで欧米を中心に発展してきましたが、日本企業による国内外の企業の買収が活発化する中で、日本企業においても表明保証保険を活用する事例が増えております。
弊社(ノバリ株式会社)では「表明保証保険」(M&A保険)を取り扱っておりますので、気になる点などありましたら、ぜひお気軽にご相談ください!