健康経営優良法人を中小企業が取得するメリットと、損害保険を使った取組方法

「健康経営・健康経営優良法人」という制度をご存知でしょうか。聞いたことがある方でも「一部の大企業の話で、中小企業には関係ない」と思っている方も多いかもしれません。しかし、中小企業こそ「健康経営・健康経営優良法人」の認定を受けるメリットが多いと言われています。多くの中小企業にとってのメリットや損害保険を活用した取得方法をご紹介します。

健康経営の目的とメリット

中小企業が抱える問題として代表的なものに下記の3つがあります。

■中小企業の課題
・人手不足の慢性化
・生産性の低さ
・後継者問題

この中でも、多くの中小企業が直面する問題が「人手不足の慢性化」です。大手企業と比べると人手の確保が難しく、人材の余裕もないため従業員1人の欠勤や退職が大きな損失につながります。そのため、連鎖的に長時間労働や休日出勤が増えてしまうことも多いです。このように「人手不足」は他の問題を引き起こす原因にもなりやすいため、中小企業にとっては非常に重要な課題と言えます。

一方、社会全体でも高齢化率の高まりが進むことで、下記のような課題が懸念されています。

■超高齢社会の課題
・社会保障費の増加による財政圧迫
・生産年齢人口の減少による労働力の低下
・介護離職による労働力の低下
・平均寿命と健康寿命

超高齢化は、中小企業・大企業ともに大きな影響を及ぼす社会共通の問題だと考えられています。特に中小企業においては、すでに抱える人手不足をより深刻にさせる危険性があります。こうした状況を受けて、経済産業省は対策のひとつとして「健康経営優良法人認定制度」を推進しています。

制度の概要と目的

■基本の考え
従業員の健康促進に取り組むことで、将来的に企業の課題を解決し、人材確保や業績向上などに繋がる。

■概要
認定基準を満たす企業を顕彰することで、
従業員の健康管理に取組でいる企業を一般に見える化し、
社会的に評価されるようにする制度。

■目的
従業員の健康を推進して、最終的には企業の生産性を向上させる事

平たく言ってしまうと「健康経営」を実践することにより、従業員や求職者、取引先、金融機関等からの評価が向上し、人材の確保と定着が起こり、経営の安定化につながることが期待されている制度です。

経済産業省の見込んでいる認定メリット

経済産業省では、健康経営優良法人の認定を受けることで得られるメリットとして様々な効果を見込んでいます。

■健康経営優良法人のメリット例

従業員健康への意識があがる
仕事へのモチベーションアップ
会社・仕事への満足度アップ
組織内部人材確保
離職率低下(若手、女性など含む)
時間外労働が減る
有給休暇の取得率があがる
企業価値認知度アップ
イメージアップ
商品ブランド向上

■中小企業にとって一番のメリット
企業によって抱える問題は違いますが、一般的に多くの中小企業にとって認定企業になる一番のメリットは人材確保ではないでしょうか。

想像してみてください。

大学4年生のA子さんは、就職活動をしています。応募した企業の中からY社とZ社から内定を貰いどちらに就職するか悩んでいます。
内定を貰った2社は、職種、業務内容、休日、年収、通勤時間等ほとんど差がありません。しかしZ社は「健康経営優良法人」の認定を受けています。

このA子さんはどちらの会社を選択するでしょうか。もちろん雰囲気や人との相性など色んな要素はあると思いますが、「従業員の健康に会社として取り組んでいるZ社」を選ぶ可能性の方が高いと思われます。同様に多くの求職者が多少の条件差であれば「健康経営優良企業」を選ぶのではないでしょうか。

求職者の方たちにとって、働く環境は会社を選ぶ際の大きなポイントなのは間違いありません。企業に人が来ない事には、生産性向上、離職率低下、後継者育成などの問題も解決が難しいです。そのため、健康経営優良法人の認定は、問題の根っことなる人材確保に会社全体で取組み、競合他社と差別化するきっかけになります。

自治体・金融機関によるインセンティブ

上記以外にも付随的なメリットが出てきています。健康経営優良法人のような「企業の従業員への健康増進取組」に対して、下記のようなインセンティブを付ける自治体や金融機関が増えています。

インセンティブの例

金融機関・保険会社融資優遇、保険料の割引等
自治体県知事などによる表彰、融資優遇、奨励金や補助金
公共調達加点評価公共工事、入札審査での入札加点

まだ一部の自治体、企業独自のインセンティブではありますが、「健康への取組」が社会全体浸透していくにつれて、拡大していく可能性が高いです。

健康経営優良法人の認定基準

経済産業省は、経営優良法人の概要、認定基準、認定企業等についてホームページで公表しています。サイトでは、何をすれば「健康経営」になるのか見える化されていて中小企業でも挑戦しやすくなっています。認定基準は毎年変わりますが、2020年度の場合は、中小規模法人部門は下記の認定基準を満たすことで認定を受けることができます。認定基準は、いくつかの項目に分かれており、必須項目とそれ以外があります。

上記だけでは具体的に何をすれば良いか分からないので、経済産業省の申請についてのサイトに「認定基準解説書」が公表されています。解説書には適合条件や不適合の例などが記載されているので、実際の取組には「認定基準」と「認定基準解説書」を詳細に確認して進めていく必要があります。また、申請できる期間も決まっているので、申請を目指す場合は、自社の状況を踏まえて何年度の認定を目指すかも重要なポイントになります。

損害保険を活用した取組方法

健康経営優良企業の認定は、企業にとってメリットが多いことは理解していただけたかと思います。しかし、人材や資源等に限りがある中小企業が認定されるのは難しいと感じている方も多いと思います。もしくは取組んではみたものの、制度の導入で躓いてしまった企業もあるのではないでしょうか。そこで一つの選択肢としてご紹介したいのが、損害保険を活用した取組方法です。

損害保険には、従業員や役員の業務中のケガ、企業の労災リスク等に備えたい方向けに、下記のような商品があります。

■業務災害、労災リスクに備える保険の例
・業務災害総合保険
(※正式名称は各保険会社により異なります)

一般的には、労災上乗せ補償とも呼ばれていたりもする商品です。この保険は、過重労働、労働安全、メンタルヘルス、従業員からの訴訟等、企業が抱える労務リスクへの対応を目的に作られています。そのため保険会社によっては、保険としての機能だけでなく下記のような様々な付帯サービスを付けている商品もあります。

■付帯サービスの例
・ストレスチェックサービス
・健康や介護などの相談窓口
・メンタルケアカウンセリング
・二次検査機関の手配、紹介
・がんや介護などからの職場復帰支援
etc…

保険会社により付帯サービスの種類・内容は異なりますが、基本的には専門の業者と提携して運営しているのでサービスの質は高いレベルで提供されています。この付帯サービスを活用することによって、健康経営優良法人の認定基準のいくつかを、クリアできる品質で導入できる可能性が出てきます。

もちろん実際に健康経営優良法人に認定されるには、制度の趣旨を理解し、会社として本気で取組む体制が必要にはなります。しかし、多くの企業にとって障害になりやすい制度の導入に、身近な保険を活用する方法もあります。認定を目指している方で、すでに業務災害に備える保険に加入している方は、現在加入している保険に上記の様な付帯サービスがあるかどうか確認してみることをおすすめします。

こうした付帯サービスは、健康経営優良法人への認定を考えていない企業にとっても、有効に活用できるものです。もしまだ業務災害等に備える保険に加入していない方や、経営優良法人の認定基準を満たす商品への切り替えをしたい方は、お気軽にお問い合わせください。