現場でできる重機の盗難対策を徹底解説! 万が一に備える保険も紹介

はじめに

新聞やネットなどで重機の盗難のニュースを見聞きし、対策を考える方もいるのではないでしょうか。実際、重機の盗難は増加傾向で、重機の高い価値が原因で狙われがちです。

しかし現場で十分な防犯対策を行ったり、万が一に備えて保険に加入したりすることで盗難のリスクに備えることができます。本記事では、重機盗難に対して現場でできる対策や補償を受けられる保険について見ていきましょう。

重機盗難が増えている背景

近年、ブルドーザーやユンボなどの重機の盗難が全国的に増えてきています。重機には重量やサイズの大きさで盗まれにくそうなイメージがある反面、意外と狙われやすいです。

なぜ重機の盗難が相次いでいるのでしょうか。

新興国への転売で大きな利益を得られるから

ユンボなどの重機の盗難が増えているのは転売が主な目的です。重機の価格はミニユンボでも中古のもので1台100万円以上、ブルドーザーで最低数百万円程度します。加えてサイズの大きいものであれば、1,000万円台や1億円を超えるものも少なくありません。

元々の購入額が高い分、盗んだ上で少し高めに転売するだけで大きな利益を得られます。しかも窃盗に遭った重機が新興国に転売されるケースもあり、この場合は警察の目も届かないために厄介です。

盗んだ重機を使って別の金属を盗むケースも

また、盗まれた重機を転売ではなく、別の金属の窃盗に使うケースもあります。特に狙われやすいのがATMです。盗んだショベルカーなどでブースを破壊し、ATMの現金を盗む手口です。2000年代には、盗んだ重機で金融機関の無人店舗を破壊し、ATMごと現金を盗んだ事例さえあります。

盗難に遭った重機が別の窃盗事件に使われるという二次被害を招く場合もあるため、現場での盗難対策は極めて重要です。

現場で徹底したい重機の盗難対策

建設現場で起きる重機の盗難を防ぐ際、現場や自社の敷地でできる対策は色々とあります。現場での盗難対策は、後述するとおり、盗難保険を最大限に活用する上でも重要です。以下の盗難対策を徹底して、盗難や二次被害を未然に防ぎましょう。

極力屋内の決まった場所に重機を止める

まず、できるだけ屋内の決まった場所に重機を止めることが大切です。重機盗難は屋外に保管された重機が狙われる傾向にあります。明け方や連休など誰もいない時間帯を狙い、事前に作った合鍵で盗み去るのが手口です。

屋内の決まった場所であれば、窃盗犯も容易には重機を狙おうとしないため、犯罪を未然に防げます。複数台の重機にチェーンをかけて施錠するとともに、保管する倉庫などにも鍵をかければ、窃盗犯も手は出せません。

【二重ロック推奨】忘れずに鍵をかける

また、休憩時や1日の作業が終わった時などに重機から離れる際は、忘れずに鍵をかけましょう。「まさか敷地に怪しい人間は入ってこないだろう」と思い、施錠しないまま離れた結果、窃盗に遭うケースもあります。中には運転台に鍵を差しっぱなしにして盗まれるケースも。

たとえ現場や自社の敷地内に止める場合でも、油断せずに重機に鍵をかけることが犯罪抑止に効果的です。重機だけでなく、運転台のハンドルにもチェーンを巻いて施錠する二重ロックを活用すれば、より盗難リスクを下げやすいでしょう。

重機にGPS機能を搭載する

さらに、重機にGPS機能を搭載する方法もあります。GPS機能を搭載した場合、現場内部での重機の盗難や不正利用を防ぐ上でも効果的です。盗難を発見した時点でアラートが送信されるため、いち早く対応できます。加えて防犯カメラと併用すれば、犯人の特定も可能です。

万が一GPSを搭載した重機が盗難に遭っても、GPSの発信する位置情報で現在位置の把握が可能です。警察もいち早く重機のもとに駆け付けられるため、犯人から取り返すことができる可能性も高まります。

赤外線センサーや防犯カメラの設置

重機の保管場所をはじめ、敷地全体に赤外線センサーや防犯カメラを設置する方法も有効です。

特に赤外線センサーには、人が体熱から放射する赤外線を感知する人感センサーもあります。人感センサーを設置しておけば、夜中や明け方など警戒すべき時間帯に不審者が現れても、自動的にライトが灯されます。

防犯カメラを敷地の入口や重機の保管場所付近などに設置しておくだけでも、犯罪防止に有効です。両方とも窃盗犯に対する抑止力として期待できるため、設置を考えてみてはいかがでしょうか。

保険への加入も重機の盗難対策に有効

重機盗難に備えるには、保険への加入もおすすめです。建設業界向けの損害保険には「重機盗難保険」という商品もあります。保険を活用すれば、万が一重機が盗難に遭っても補償を受けられるので安心です。

重機盗難保険は代車のレンタル費用まで補償

重機盗難保険では、名前の通り重機が盗難に遭った場合に、重機の価格(資産価値)や年数に応じて保険金で補償してもらえます。また保険料も、保険の対象とする重機の価格によって変動する仕組みです。

しかも盗難に遭った重機の代わりになる車両(代車)のレンタル費用も、保険で補償してもらえます。重機盗難保険では、盗難以外にも火災爆発や水害、いたずらなどの被害に対しても補償を受けられるケースが多いので、各保険会社の補償内容を確認してみましょう。

建設工事保険で重機盗難が補償されるケースも

また建設工事保険でも、重機の盗難をカバーできる場合があります。建設工事保険は一般的に、建築物などの工事の目的物や資材・材料などが対象です。商品の中には、特約などで重機の盗難や工事中の事故で第三者が受けた被害まで広くカバーするものもあります。工事中の事故とあわせて備えをしたい方におすすめです。

ただ重機の盗難に対してどの程度補償されるのかは、商品によって異なります。各商品の補償範囲や注意書きをしっかり読んだ上でご検討ください。

重機盗難に備えられる保険の注意点

重機の盗難に備える上で、保険は安心できる存在です。ただし保険に加入する際はいくつか注意すべき点があります。保険を検討する際、以下の2点にご注意ください。

必要な防犯対策を施していないと免責される場合も

まず、重機の盗難に備えられる保険は、現場や自社の敷地内で防犯対策を施していることが補償を受ける条件です。もし重機の施錠を忘れたり、防犯カメラを設置していなかったりするなど対策を怠っていた場合、補償を受けられない場合があります。

保険を十二分に活かすには、上記でご紹介した現場での防犯対策と組み合わせることが欠かせません。保険加入だけで安心するのではなく、各現場や保管場所でも十分な対策を行いましょう。

重機の経年劣化で保険金額が下がる

また一般的に、保険をかける重機そのものの経年劣化によって保険金額は下がります。重機盗難に備えられる保険では、対象となる重機の保険金は重機の資産価値に応じて決まります。

年月とともに劣化が進んだ場合、重機の資産価値は購入価格に比べて下がっていくため、保険金額も減らされる仕組みです。重機の盗難はいつ起きるかわからないため、年ごとにもらえる保険金のシミュレーションも立てておくと良いでしょう。

まとめ

工事現場などで動かす重機は、それ自体が高価な機械である分、盗難のターゲットになりやすいです。日頃から安全に保管できる場所で十分な防犯対策を施しつつ、保険に加入しておけば、窃盗犯に対する抑止力となります。

防犯対策と盗難保険はいわば両輪のようなものであるため、両方を十分活かせるように備えることが大切です。重機盗難はいつ何のきっかけで起こるかわからないため、日頃から入念に対策を立てておきましょう。

重機盗難保険の内容は、保険会社によって異なる場合があります。自社の事業に最適な保険を選択するためには、重機盗難に通じた専門家に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

和泉 直樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

フリーランスライターとして2017年1月から活動中。2023年7月に2級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。保険も含め幅広いジャンルの金融系記事の執筆に携わった経験や、それを通じて得た専門知識での解説を行っている。

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