建設業者が加入すべき保険とは? 何に備えるかで分類しながら解説。保険の選び方のコツやポイントも紹介

はじめに
建設業は事故が起きやすい業種です。安全に工事が進められるような措置が多く取られるようになり、事故の件数は年々減少していますが、それでも他の業種と比較すると危険と隣り合わせであることには変わりありません。
事故が起きないよう対策するのは前提ですが、万が一事故が起きてしまうと、損害賠償の支払いなどで多額の出費が必要になります。そのため、通常、建設業に携わっている会社は、事故に備えた保険に加入しています。しかし、自社に合った適切な保険選びができていないと、万が一の時に必要な補償が受けられないということも起こりかねません。そこで今回は、建設業向けの保険について、選び方とあわせて解説します。
建設業が抱える主なリスクと加入すべき保険
建設業のリスクとして最も大きなものは、工事現場で起きる災害や事故です。めったに起こることではありませんが、起きてしまった場合の影響は非常に大きなものとなってしまいます。工事現場には多くの建設業者が出入りしていますし、現場周辺には住民や通行人もいるため、何かあった場合には自社以外の人や物が関わってくることも少なくありません。
そこで、建設業が抱えるリスクに備えて保険に加入する場合でも、「自社と自社以外のどちらか」「被害を受けたのが人か物か」という視点でとらえ、それぞれをカバーするようにすべきだと言えます。
なお、下記のように分類して保険の種類を解説していますが、あくまで「何に備える保険か」という視点で分類したものであり、保険の名前は各社で異なる場合もある点にご留意ください。
①賠償責任保険:第三者への賠償責任
賠償責任保険は、第三者に対する法律上の賠償責任を負うことになった場合、それによって生じる損害に対して保険金が支払われるものです。「自社以外の人や物に損害を与えてしまったケースに備える保険」だと言えます。
「賠償責任保険」と聞くと、「PL保険(生産物賠償責任保険)」を思い浮かべる人も多いでしょう。確かに、PL保険は賠償責任保険の一種ですが、注意点があります。それは、引き渡し後に発生した賠償責任だけが補償対象になっているということです。つまり、工事期間中の対人対物事故は保証対象外となるので、その点については別の保険で備えなければなりません。
②労災上乗せ保険:従業員のケガや死亡
会社は、労働災害が起きた場合に備えて、公的な労災保険(労働者災害補償保険)への加入が義務付けられています。これにより、業務上・通勤による労働者の負傷や死亡等に対して保険給付が行われます。
しかし、労災保険は、訴訟費用や労働者・家族などへの慰謝料といった費用をカバーするものではありません。また、労災保険の金額だけでは不十分であったり、労災認定まで1年以上かかるケースもあったりするなど、被害にあった労働者や家族の生活を支えるために、追加の費用や先行した支払いが発生することもあります。
こういった「労災保険ではカバーしきれない部分」に備えられるのが、民間の労災上乗せ保険です。労災上乗せ保険は、「自社の人が受けた被害に備える保険」となります。
③物保険:建設中の建物や資材の損害
物保険(ものほけん)は、具体的な物に生じたさまざまな損害を補償する保険です。「自社や自社以外の物に損害が発生した場合に備える保険」となります。ただし、自社以外の物への損害は、①の賠償責任保険にあたる部分でもあるため、ここでは自社の物についての損害について説明します。
自社の物に発生するトラブルには、資材が事故で破損したり、盗難被害にあったりするケースなどが考えられます。こういった「自社の物に損害が発生した場合に備える保険」が物保険です。
④その他のリスク
上記のような、「自社・自社以外」「人・物」に関するリスク以外に、取引先からの回収リスクもあります。建設業はメーカーなどと異なり、1社あたりの回収額が大きく、一度貸倒れが発生した場合のダメージは非常に大きなものとなります。そこで活用できるのが、売掛金の回収ができなかった場合に一部を補償してもらえる「取引信用保険」です。
建設業の保険選びのコツ・ポイント
建設業が加入すべき保険がわかれば、次は、どの保険にどの程度の保険料をかけて加入するかを考えなければなりません。建設業向けであればどんな保険でも良いわけではなく、自社に合った保険選びが重要です。そのコツやポイントをまとめました。
補償内容と保険料のバランスで選ぶ
会社が加入する保険は、補償範囲を広くすることになり、企業規模が大きいほど保険料も高額となります。保険料は毎年支払い続けなければならないものであるため、万が一の場合に備えたいと考えて加入しすぎると収益を圧迫することになりかねません。とはいえ、補償範囲を狭くしすぎると、いざというときに補償される金額が不十分になってしまいます。
万が一の場合に備えられるのは保険だけではなく、社内で現預金をプールしておくことで備えることもできます。どういった補償を充実させたいかなどを検討しながら、自社の資金状況も含めて、バランスのよい保険料水準で加入することが大切です。
自社で起こりうる具体的なケースを想定する
建設業向けの保険と言っても、各社が同じ内容の保険を取り揃えているわけではありません。ある部分だけに特化した保険もあれば、あらゆるリスクをカバーした保険もあります。それぞれが他社と差別化しようと特徴のある保険を用意しているため、さまざまな保険を比較検討する必要があります。
その際に、「自社で起こりうる事故・損害」がどのようなものかを想定しておきましょう。元請けか下請けか、どのような工事を請け負っているのかなどで、どのような事故が起きるか、どのようなリスクがあるかは異なります。それにより、幅広いリスクに備えた保険にすべきか、個別のリスクに備えた保険を組み合わせるべきかが変わってくるためです。
保険のプロ・専門家に相談する
このように、自社のリスクを具体的に想定しながら、保険料とのバランスを考えて保険選びをすることが大切です。しかし、保険の内容をしっかりと理解しようとすると、難しい専門用語を読み解きながら、どのような補償内容になっているかを確認しなければなりません。
また、複数社の保険を比較しようとしても、補償範囲が異なっていることも多いため、保険料で比較することが難しいこともあります。
そこで、保険代理店やコンサルタントといったプロ・専門家に相談するという方法もあります。ただ、どういった業界の保険に詳しいかなどの得意不得意があるため、建設業に精通した専門家に相談するのがよいでしょう。
まとめ
建設業を営む会社が加入すべき保険は、「自社・自社以外」「人・物」で分類することができます。
- 自社以外の人・物:賠償責任保険、物保険
- 自社の人:労災上乗せ保険
- 自社の物:物保険
このそれぞれについて、自社がどのような工事を請け負っているのか、どの程度の保険料で備えるべきかを考えながら、最適な組み合わせで保険加入することが大切です。
ただ、適切な保険選びのためには、保険に関する専門知識も必要です。建設業に精通した保険会社や保険代理店に相談しながら、自社にぴったりの最適な保険プランを提案してもらうことをおすすめします。
この記事を書いた人
横山 研太郎
シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト
ねこのて合同会社代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。
